外壁・外装タイルの汚れを洗浄する際、塩酸等強い酸性洗剤を使用しますと、タイル表面の釉薬を侵してしまったり、植栽にダメージを与えたり、環境への負荷が大きかったりします。
せっかくきれいにしたのに、余分な仕事を増やしてしまったなんてことにならないよう、 ここでは、外壁・外装タイルの洗浄において、生分解性に優れた有機酸をベースにした洗浄方法をご紹介します。
■タイルの汚れについて
まずは、タイルに付着する汚れは、一体どんなのものがあるのでしょうか?
原因別に分類しますと、下記のようになります。
A 通常発生する汚れ
・新設時に残ったノロ汚れ(タイル目地のノロ)
・自動車や工場から出てくる煙を受ける
・鉄道の線路から飛散した鉄粉が付く
・黄砂・花粉などの自然なホコリ(粒子が非常に細かい)
・藻やカビ
・雨だれの汚れ
・タイル釉薬の退色(釉薬の劣化によって酸化ケイ素が表面に形成される)
B 施工不良による汚れ
・エフロ(モルタルの水分過多もしくは建築物の防水機能の不備・機能低下)
・工事中に付着した汚れ(塗装・プライマー・シールなど)
C 施工後の人為的な汚れ
・油・オイルの汚れ(エントランス土間・壁面など)
・建具・金物からのもらいサビ
・落書き
D 特有のタイルに発生する汚れ
・ラスタータイルや濃色タイルに発生する虹彩現象(炭酸塩・硫酸塩・珪酸)
・無釉タイルに発生する粉吹き(アルカリ金属塩)
E そのほか
上記のタイル面の汚れをさらに集約してまとめますと、次のようになります。
1.モルタル汚れ(エフロ含む)
新設のタイル表面は目地セメントを塗り込んだ際にモルタル成分が付着します。 通常希塩酸洗浄を行いますが、希塩酸で完全に溶解除去させるには数度の洗浄が必要です。 実際の施工では、目視で除去出来ている範囲内で洗浄を終了しています。
また、目地セメントの乾燥の過程で若干のエフロ成分がタイル表面に付着します。
2.煤煙等の付着物
この汚れが通常の洗浄剤で落ちにくいのは、釉薬の表面に汚れが付着しているのではなく、残存したモルタル・エフロ成分に汚れが付着し、細孔にいり込んでいるためです。
3.サビ(酸化物)
3.タイル釉薬の退色(酸化ケイ素)
4.その他
■今までの洗浄の仕組み(希塩酸洗浄、フッ素水素)
私が紹介したタイルクリーナーは、前述のタイルに汚れが付着するメカニズムに注目して設計されています。 その前にまずこれまでの洗浄の方法とメカニズムを説明します。
希塩酸による洗浄(きえんさん せんじょう)
これまで洗浄には希塩酸が用いられていました。希塩酸洗浄は安価で、またサビを除去することも出来ますので御影石などの石材の洗浄などにも利用さていますが、次のようなトラブルの原因ともなっています。
◎希塩酸の洗浄によるトラブル
石材の黄変・赤変
金属製建材のサビの発生
これは、エフロ成分を分解した際に発生する塩化カルシウムが残ったとき、サビを誘発するためです。また、
他の薬品と反応して塩素ガスがでる
樹脂を侵す
劇物として人体に有害である
という点で、日常の業務や生活で人の出入りのあるマンションや商業用ビルなどの改修工事には、
リスクが高い薬品です。
フッ化水素による洗浄
タイル洗浄においてフッ化水素を主成分とする薬品が利用されることがありますが、この薬品はガラスの主成分であるケイ素と化学的に反応します。
釉薬の主成分であるケイ素と反応し、釉薬を溶解させることでタイル表面の汚れを取り除く仕組みとなっています。
◎フッ素水素の洗浄によるトラブル
釉薬を完全に剥がしてしまう(濃度選択のミス)
結果的に「釉薬の質感」「釉薬のもつ防汚効果」を「失う」ことになります。
垂れた薬剤によって釉薬がスジ状に侵される
ガラスに飛散した場合、ガラスを侵す
フッ化水素は、毒物に指定されていますので、やはり日常の生活や業務で人の出入りのあるマンションや商業用ビルなどの改修工事にはリスクが高いと言えます。
■タイルクリーナーの洗浄の仕組み
私が紹介したタイルクリーナーは、前述のタイルに汚れが付着するメカニズムに注目して設計されています。 タイルクリーナーの成分は、下記のようになっています。
・スルファミン酸
・乳酸
・クエン酸
・その他有機酸
・水
・その他
モルタル・エフロ成分は、スルファミン酸によって、
最終的に水溶性の水酸化カルシウムと炭酸ガスになります。
モルタル・エフロ成分は、スルファミン酸によって、最終的に水溶性の水酸化カルシウムと炭酸ガスになります。
スルファミン酸は水アカ・鱗状痕として現れる金属塩の除去にも優れ、金属を傷めにくい特長があります。地域の下水道のスケール除去工事に用いられるように下水道処理できる薬剤です。
乳酸・クエン酸などの有機酸は、食品添加物として私たちが日常摂取している成分です。酸度は高いものの、自然由来の酸のため、生分解性にすぐれ、環境への負荷が低い点が特徴となっています。
私がおすすめするタイルクリーナーは、塩酸と異なり、誘錆剤である塩化カルシウムの発生もなく、乳酸やクエン酸が、頑固な酸化汚れ(サビや煤煙の一部など)を除去し、フッ化水素溶液のように釉薬を侵すことなく、タイルのくすみや茶褐色化した釉薬をもとに戻します。
私がおすすめするタイルクリーナーの特徴
①塩酸を使用しないので施工による二次トラブルを未然に防ぐことができます。
(サビ・黄変・赤変など)
②生分解性に優れた有機酸(乳酸・クエン酸等)が主成分のため環境負荷が少なく、作業の安全性・効率性が高まります。
③有毒ガスの発生がなく集合住宅でも安心です。
④植栽に対してダメージが少なく安心です。
⑤タイル表面の釉薬を侵さず洗浄します。
⑥エフロ除去・金属塩除去に効果があります。
(参照文章・写真、ビアンコジャパン)